化学って見知らぬ記号がいっぱいでてきたり、わけのわからない名前がいっぱい出てきたり、厄介な科目ですよね。さまざまな記号や難しそうな図を覚えたりしなければならないし、いまいち勉強してもイメージがつきにくいので化学は敬遠されがちな教科だと思います。理系の大学を受けるためには、化学が必要だということで渋々選択しているという人も多いのではないかと思います。でも、実は化学がわかると、身の回りの現象がどのようなメカニズムで生じているかがわかるのです。

化学で何を勉強して欲しいの?

文部科学省は2022年より高等学校の指導要領を新しくすることを決定しています(いわゆる新指導要領)。特に、国語のあり方は大きく変化します。私たちの社会は変化が激しく、不確実で不安定になりつつあります。このような時代はVUCAの時代などと呼ばれています。 VUCAとは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の四つの英単語の頭文字をとった造語です。

この時代において理系科目の基礎的な知識や考え方は国際的にも需要が高まってきているものの、日本の中高生の理系教科への関心や好奇心は国際的にも低い水準となっています。文部科学省はこの事態に危機感を持ち、理系科目の醍醐味でもある「観察・実験」などの自然科学の研究方法への理解も深められるようなカリキュラム設計へと指導要領を改訂しました。

そして、文部科学省は理科系科目で学ぶべきことを「エネルギー」、「粒子」、「生命」、「地球」の四つの大分類にまとめています。そして、化学はその中でも「粒子」について主に学ぶ科目となっています。

とはいえ、今回の改訂は国語や数学に比べると、前回の指導要領からの変更点は少ないものとなっています。「化学」と「化学基礎」という科目の区分もそのまま残っています。

物質の性質と変化を扱うのが化学

粒子について学ぶのが化学だということですが、では具体的にはどのようなことを学んでいくのでしょうか。化学とは、物質の性質と変化を扱う学問であるということができます。化学の歴史は古く古代ギリシアにその萌芽を見ることができます。例えば、古代のギリシア人は万物の根源を問いました。その中で、万物の根源として「水」「火」「混沌」「原子」などがあると議論されていきました。このような根源的な物質のことを元素といいますが、この用語は少し意味を変えて現在も用いられています。

ちなみに、化学は英語でChemistry(ケミストリー)ですが、エジプト語でChemiaは「黒い土」を意味する単語です。つまり、エジプトで窯業や金属加工をする中で物質の性質への関心が強くなったことに起源があるということもできるでしょう。

化学の発展は錬金術の発展なしには考えることができません。錬金術は、金を人工的に錬成しようとする試みです。具体的には、鉄や鉛などの卑金属(酸化しやすい金属)から菌や銀などの貴金属(酸化しにくい金属)へ変換しようとする試みです。この試み自体は結局のところ失敗するのですが、その過程でさまざまな発見や発明がなされていきます。例えば、ビーカーなどの実験器具も錬金術の試みの中で発明されますし、亜鉛や硫黄などの物質も発見されていきます。

17世紀になると他分野においても「科学革命」と呼ばれるような科学の大発展の時代が到来します。ここから化学も大きく発展していくことになります。その中でもラボアジェという人物が化学の発展に大きく貢献しました。ラボアジェは主に燃焼実験を通じて、酸素や窒素など目には見えない物質を発見するに至りました。このように17世紀以降は、物質を実験によって測定し、物質の性質や変化を調査するという近代的な化学が発展していくようになったのです。

また、近代社会の発展は化学の発展なしには考えられません。石炭や石油を燃やしてエネルギーを生成するという発電技術、素材を生産したり加工したりして衣服などを作る繊維産業、農薬や肥料などを研究開発する化学工業、鉄などの金属を加工し自動車などをつくる製造業、医薬品やワクチンなどを開発する製薬業など私たちの生活を支える基本的な産業は化学の知識なしには存在し得ません。そもそも、身の回りで当たり前のように使っているほぼすべてのものが化学的な知識の発展なしには考えられないと言っても過言ではないでしょう。何気なく暮らしている私たちの生活を支えているのは化学的な知見を応用することで生まれた科学技術なのです。

このように、化学というのはそもそもこの世界を構成している元素はどのようなものがあるのだろうか、目には見えない物質も含めてその性質はどうなっているのか、物質はどのように変化していくのかを明らかにする学問ということができます。そして、その発見は多くの発明へと応用され、私たちの生活を支えているのです。

結局、何を勉強すればいいの?

化学という学問がどのようなものであるかについてはその概略を理解していただけたかと思いますが、高校の化学ではどのような分野を勉強していくのでしょうか。高校化学の分野は三つに分けることができます。「理論化学」「有機化学」「無機化学」の三つです。

理論化学

理論化学では、化学の基礎的な理論を学んでいききます。例えば、化学の基本的な用語である「元素」やmolなどの基本的な用語を学んだり、化学に必要な数式や法則など基本的な知識を学んでいきます。また、理論化学で必須となるのが元素表の構成原理を理解し、重要な元素を覚えることでしょう。元素の性質と周期表を理解していなければ、化学が何をしているかわからなくなってしまいと思います。

有機化学

有機化学では、有機物の性質や変化について学んでいきます。有機物とは、炭素と酸素を含む化合物のことをいいます。と、言われてもちんぷんかんぷんだと思いますが、私たちの身体は有機物です。私たちの身体を構成するタンパク質や脂質、炭水化物は有機物です。つまり、私たちの身体は炭素と酸素を含む化合物なのです。そう考えるとなんだか不思議じゃないですか。このような有機物の化学的な性質や反応を扱うのが有機化学なのです。

無機化学

無機化学では、無機物の性質や変化について学んでいきます。無機物とは、炭素以外の元素で構成される化合物のことをいいます。具体的には、塩や金属などが無機物に含まれます。とはいえ、無機化学の対象は実際には幅広く、ナノテクノロジーなども無機化学に含まれる場合もあります。ナノテクノロジーを応用することで、超ミクロな物質の加工なども行うことができるため無機化学は工業とも密接な関わりを持った分野です。地球上に存在する無数の無機物を扱うのが無機化学です。

高校化学では、以上のような大まかに三つの分野について学んでいきますが、大学以降になると生物学や物理学などの知識も化学において必要とされます。また、繰り返しにはなりますが化学の知識は医療薬品や工業製品を製作する上で必須のものとなるので、その応用範囲も広いと言えるでしょう。それは、化学の発展が錬金術の発展と密接に結びついていたことを考えると当たり前のことではあります。このように人類の技術の発展と化学の発展は密接不可分であるため、化学の知識は現代社会において必須の教養とも言えるでしょう。もちろん、細かな計算式や記号、化学式などを丸暗記する必要はありません。

どうしても日本の教科書や化学の問題集だけでは、化学のおもしろさを十分に伝えることができないと思います。むしろ、化学の面白さ、そして化学の考え方やものの見方を獲得することが必要です。そのためには、教科書だけではなく、化学史の本などを読んでみるのもいいかと思います。化学史を理解することによって、教科書に書いてあるような知識に血が通うからです。どのようなモチベーションで、どのような実験をして、どのような文脈の中で化学的な発見が生じたのかを調べることによって、教科書に書いてあるような知識がより生き生きとした形で現れてくるでしょう。

また、近年は動画素材なども非常に充実しています。化学という教科は目には見えない物質についても扱うのどうしてもイメージがしづらいと思います。そのため、Youtubeなどの動画の力も借りて具体的なイメージを養うことが化学の勉強には必要でしょう。

予備校が出している参考書や問題集に頼り切るのではなく、教科書や化学史の本、Youtubeなどの動画素材を組み合わせて学習を進めていけば、必ず化学のものの見方は獲得できます。その上で、問題演習などを行う方が楽しいでしょうし、勉強も捗るのではないでしょうか。

化学を通じて身につく能力とは?

最後に、化学を通じて身に付く能力について考えていきたいと思います。化学を学び身につく能力は身の回りの出来事や技術に対する想像力でしょう。例えば、LEDと白熱ライトの違いがどのようなものかもわかるでしょうし、なぜ火が燃えて窒素が封入されている消化器で火を消すことができるのかもわかるでしょうし、プラスチックがなぜ環境を汚染しやすい物質なのかもわかるでしょう。そのように私たちが当たり前に観察したり、使ったりしているものについて深く理解し、未知のことやものに対しても化学的な想像力を用いて予測することができるようになれます。

また、現代社会は知識の非対称性を用いることで、化学的には効果が未知数な物質をあたかも効果があるように見せかけて売る企業などもあります。そのような企業の広告に惑わされることなく、適切な消費行動を取ることだって化学的な想像力を使えば可能になるでしょう。このように、化学を通じて身につく1番の能力は身の回りの物事に対する想像力だと思います。そして、化学の知識と技術なしには成立し得ない現代社会を把握し、適切に生きていくためには化学的な想像力は必須の能力であると思います。


化学の他の記事を読む

他の科目の記事を読む

ルークスで学ぶ

オープンキャンパス

学生・教職員が企画するオープンキャンパスはこちらから

個別入学相談

入学に関するさまざまな疑問・お悩みをご相談ください

イベント/体験授業

特別授業の一般公開イベントは誰でもお気軽に申し込めます

入試案内

4月・9月入試に関する情報はこちらから

学校・学生達の雰囲気を体感してみませんか?

Loohcs高等学院について知りたい方へ

個別相談のご予約はこちら