「どうしても朝起きることができず、学校に遅刻しがちである」、そんな悩みを抱えている中高生のみなさんや、お子様がそういった症状で困っている保護者の方はそう少なくはないでしょう。それはもしかしたら、起立性調節障害かもしれません。今回の記事では、中高生の10人に1人が発症しているとも言われる起立性調節障害について、症状や対処を解説した上で、教育としての向き合い方を考えていきます。起立性調節障害(OD)とは?どんな症状が見られる?起立性調節障害でよく見られる症状として、「朝起きられない」「立ちくらみ」「動悸・息切れ」「倦怠感があり、疲れやすい」「食欲がない」などがあります。午後になると比較的元気になるので、単に体力がないとか、怠けているようにも見えてしまいますが、起立性調節障害は、自律神経系の異常で循環器系の調節がうまくいかなくなる、れっきとした疾患です。成長期で心身のバランスが一時的に崩れることにより発症しやすくなります。よって、2〜3ヶ月と一過性であることが多いですが、個人差も大きく、2〜3年にわたって症状が継続することもあります。また、男子よりも女子の方が約1.5~2倍ほど発症しやすい・夏場よりも冬場の方が軽快しやすいなどの傾向があります。自律神経機能不全ですので、身体的要素以外にも、精神的・環境的要素も関わって起こると考えられています。生真面目なお子様の方が、ストレスを感じやすく、自律神経の調整がうまくいかなくなって発症してしまうことが多いようです。生活に支障をきたしている場合には診察を受け、生活を整えるなどの対応をしていくものとなります。最も重要なのは、症状であることに理解を示し、お子様の感じるストレスを軽減していくことです。また、朝起きられないために不登校になる割合も高く、「起立性調節障害小児の3分の2が不登校である」「不登校小児の約半数が起立性調節障害を合併していた」というデータもあります。中高生の10人に1人が発症しているとも言われる、珍しくないはずの病気ですが、学校側の理解や対応がまだまだ追いついていないというのが実情です。しかし、長期にわたる生活リズムの反転や不登校状態、引きこもりを引き起こす恐れもあり、発症の早期から、適切な治療と、家庭生活や学校生活における環境調整を行い、適正な対応を行うことが不可欠と言えるでしょう。どのような対処がとれる?まずは血液検査を視野に起立性調節障害は、血液検査を行っても数字として現れる病気ではありません。よって薬の投与ではあまり大きな効果が見込まれないことから、治療方針として食生活の改善など地道な手段が取られ、ご本人や保護者の方は忍耐強さを求められることになります。しかし、血液検査の結果、起立性調節障害というよりもむしろ鉄欠乏性貧血【リンク】であるということが発覚することもありますので、まずは病院で検査をしてみるということも視野に入れると良いでしょう。食生活の改善と、寝たままにならないことが大切起立性調節障害に関する食生活の改善については、例えば、塩分摂取量を増やす・水分補給をこまめに行うなどの指導が医師によって行われることが多いです。具体的には、食事以外に毎日水分を2L・塩分を10g摂る必要があるとされています。また、調子が悪いからといって寝たままで過ごすと、自律神経系の調節が治りにくくなってしまうので、座った状態で過ごすことも大切です。周囲の精神面のサポートが最重要精神面のサポートとしては、症状に理解を示すことが非常に重要です。本人の訴えでしか判断できない症状が多いため、子どもの症状を「怠け癖」や、ゲームやスマホへの耽溺、夜更かし、学校嫌いなどが原因だと考えて、叱責したり朝に無理やり起こそうとして、親子関係が悪化することが少なくありません。症状がひどく学校に行けないことを、お子様は非常につらく感じ、重く受け止めています。身体が辛いのに登校しなければならないという圧迫感が、さらに病状を悪化させ、不登校へと至ってしまうお子様も少なくありません。苦痛を理解し、十分に頑張っていることをきちんと評価することが大切です。「午後からなら登校できる、行事や部活動なら行ける、遊びになら行ける」などは、起立性調節障害のお子様には良くあることで、むしろ症状の軽快に役立ちます。心の負担なくこれらができるように、症状があっても充実した生活ができるように、ご家族・学校関係者・同級生なども含め、周囲の人々があたたかく見守っていくことが大切です。「ODは身体疾患であり、根性や気持ちの持ちようだけでは治らない」ということに理解を示し、良好な関係を維持することもまた、症状の軽快へと繋がっていくのです。教育現場でも「理解」が大切通っている学校によって、理解があれば朝早くの授業に遅れてしまってもよいとして対応してくれることもあります。しかし、そういった対応だけでは、最終的には必要な単位が足りなくなってしまったり、出席日数の影響で内申点が下がってしまったりと、未だ十分な理解や協力があるとは言えないケースも多いです。それに伴ってお子様がだんだん意欲を失っていってしまうこともあります。学校としては、教職員が起立性調節障害に理解を示すことが必要でしょう。精神的な支援はもちろんのこと、ご本人に無理のない範囲で勉強の遅れを手厚くサポートすることができれば、自信の回復にも繋がり、症状の軽快に貢献されます。また、学校に不規則にでも通う際、教職員よりもむしろ同級生からどう思われているかが、心理的抵抗に関わってきます。よって、同級生がある程度の理解を示したり、過剰な反応をせずに気兼ねなく過ごせるような環境がより望ましいと言えるでしょう。繰り返しますが、現状としてはまだまだ学校現場も対応しきれていないのが現状です。学校を選ぶ際には、起立性調節障害に少しでも理解のあるような仕組みを採用している学校を選ぶことができれば、卒業要件や成績の心配が軽減され、より一層、症状の軽快へと繋がっていくでしょう。【本記事の参考・出典】https://www.jisinsin.jp/general/detail/detail_01/https://www.saiseikai.or.jp/medical/column/od/#:~:text=%E8%B5%B7%E7%AB%8B%E6%80%A7%E8%AA%BF%E7%AF%80%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%AF,%E3%81%A8%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82学童期に多い「起立性調節障害」-東京逓信病院https://www.hospital.japanpost.jp/tokyo/shinryo/shouni/kiritsuseityousetsu.html