「社会に出る」「社会人になる」「社会で通用する」「社会のために」などなど、さまざまな場面で私たちは「社会」という言葉を使います。私たちは当たり前のようにある社会の中で生まれ、一生を通じてある社会の中で生活します。

しかし、あらためて「社会とはなに?」と聞かれると、答えることができますか?意外とと言うか、かなり難しいのではないでしょうか。

最も身近で、最も遠い存在。それが「社会」なのではないかと思います。今回の記事では、「社会とは何だろう?」「社会学とはどんな学問?」ということについて解説していきたいと思います。

社会は社交?

社会は、英語では”society”ですが、”society”には社交という意味もあります。人付き合いが上手な人は、社交的な人と言われたりしますよね。あるいは、社交パーティーで裕福な人たちが仮面をかぶってダンスをしているシーンを思い浮かべる人もいるかもしれません。

一方で、社会というと日本社会や国際社会とも言われるように、かなり大きな集団をイメージすることが多いのではないでしょうか。そう考えると、社交と社会が英語では同じ言葉で表現されることに違和感を感じるかもしれませんね。

しかし、実は社会を理解する上で、社交という言葉で喚起されるイメージとはとても役に立ちます。というのも、社交とは見ず知らずの人たちと関係性を築く行為のことを言うからです。具体的には、見知らぬ他者と親交を深めて、自分の利益につながるような交渉をすることが社交です。このような見ず知らずの人たちと関係性を構築するということが社会の原型的なイメージを構成しています。

そのことをより理解するために、ドイツ語も頼りにしましょう。ドイツ語で、社会はゲゼルシャフト-Gesellschaftといいます。ゲゼルシャフトとは、人間同士が互いにある利益のために人為的に作り出した集団のことを指します。イメージとしては、国家・都市などを想像するといいでしょう。

ゲゼルシャフトに対置される概念が、ゲマインシャフト-Gemeinschaftです。ゲマインシャフトとは、自然発生的な集団のことです。イメージとしては、家族や村落などを想像するといいでしょう。

テンニースという初期の社会学者は、近代社会の特徴をゲマインシャフトからゲゼルシャフトへの変化として捉えました。都市圏に住んでいる人は、道ですれ違うほとんどの人のことを知りませんよね。学校や会社にも全然関わったことがない人がそれなりの数いると思います。もっというと、日頃食べている食材や服を誰が作って、誰が運んで、誰が売っているかなんてほとんどわからないと思います。

一方で、「田舎」や「地方」と呼ばれる地域に住んでいる人は、都市圏に住んでいる人よりもより「顔の見える関係」を築いています。食材の物物交換も成立しているところもあるでしょうし、近所付き合いも都市圏に住んでいる人よりは濃く存在しています。そうであるからこそ、「田舎は関係が豊かである」が、「田舎は閉鎖的」なんてことも言われるのです。

さて、ずいぶん議論を進めてしまいましたが、社交と社会の関係性を改めて考えていきましょう。いま見てきたように、私たちの生きている社会は見知らぬ人たちのネットワークによって成立しているのです。意識するにせよ、意識しないにせよ、見ず知らずの人たちとの複雑な関係こそが、私たちが生きている社会なのです。まさに、社交の世界ですよね。自分たちの利益(快適な生活)のために、見知らぬ他者と協働しているが、無数の見知らぬ人と友人のような関係性をつくっているわけではない。これが、社会の原型的なイメージなのです。

社会はいつからあるの?

さて、今まで説明してきたような、私たちが生きている「この社会」はいつから存在しているのでしょうか。つまり、国家や都市、もっというと国際社会のような「見ず知らずの人たちとの複雑な関係」によって成立している社会は、いつ誕生したのでしょうか。

そのことを考えるために、このような社会の条件を検討してみましょう。まず、何よりも大規模な交通ネットワークが整理されている必要があるでしょう。具体的に考えてみましょう。

例えば、日本でもっとも人口の多い東京では、その人口を餓死させないほどの食糧を生産してはいません。日本国内や世界中から食料が東京に供給されていなければ、たちまち多くの人が餓死してしまうでしょう。そして、大量の食料が供給できるのは、道路・鉄道・航路・空路が整備されているからです。さらに、供給された食糧を保存するための冷蔵・冷凍施設や巨大な倉庫もまた必要になります。食糧を、加工・販売する店も必要ですし、美味しく調理するレストランもまたニーズがあるでしょう。

そして、そのように人やモノの移動が活性化すると、次第に人やモノが集積する巨大な都市が生まれるようになりました。都市は、複雑なネットワークの結節点とも言える空間で、都市はあらたなライフスタイルを生み出しました。分業は進み、ネットワークはより複雑化しました。

人々はより自由を求めるようになりました。「移動の自由」、「商売の自由」、「思想の自由」などのさまざまな欲求が生まれたのです。そして、そのような「自由」を保障する思想や制度もまた求められるようになりました。それが、「民主主義」や「国家」という枠組みだったのです。主役は、王族や貴族ではなく、市民一人ひとりであるということです。そして、「王族」を打倒し、市民一人ひとりが自由な社会を建設しようとする革命が多くの文化圏で発生しました。

わたしたちがイメージするような社会は、このような市民が主役であり、一人ひとりに自由が保障され、自由な活動が多様な形で結びつき複雑なネットワークを形成し、それを国家が保障するというようなそんな社会のあり方なのです。

そのような社会の姿が広い形でみられるようになったのが19世紀です。つまり、私たちが当たり前にイメージする社会のあり方は19世紀に誕生したといえるでしょう。そして、「自由」「権利」を求め、都市化が世界各地で進み、グローバルに人・モノ・カネ・情報が結びついていく「近代化」の運動はいまなお進行中の出来事です。

社会学はどんな学問か

「近代化」の進展とともに、私たちの社会=複雑なネットワークは日々その姿を変えていっています。ネットワークのあり方がかわると、私たちの生活も大きく変化していきます。コロナウイルスを経験したわたしたちにとって、そのことは感覚的にわかるのではないでしょうか。外出することや集まることが困難になった結果、オンライン化がどんどん進みました。仕事の多くはオンラインでできることがわかり、テレワークが当たり前になりました。出社する必要がなくなった人の中で、東京を離れて、地方で暮らしながら仕事をするという選択をする人も増えました。このように、ネットワークのあり方が変容したことによって、私たちの生活も大きく変化しうるのです。

私たちが経験している以上の社会的ネットワークの変容を経験した19世紀の人々によって、確立されたのが「社会学」という学問です。大きな社会の変化をリアルに感じた彼ら・彼女らは「何がどう変化しているのか」「新たな関係のあり方の本質は何か」「私たちの社会はこれからどこへ向かうのか」ということに関心を抱き、新たに生まれた社会の見通しを良くするための理論や調査を行なっていきました。

主な初期社会学者は、エミール・デュルケム、マックス・ウェーバー、カール・マルクス、ゲオルグ・ジンメル、ガブリエル・タルドなどを挙げることができます。デュルケムは、近代社会の本質を「分業」に見出し、ウェーバーは資本主義の行動様式を「プロテスタンティズムの倫理」に見出し、マルクスは資本主義の問題点を「疎外」という観点から指摘し、ジンメルは近代社会の特徴を「都市の生活様式」に見出し、タルドは社会生活の均質化を「模倣」の観点から考察しました。初期社会学者の功績は、「近代社会の基本的なものの見方」を提示したところに求めることができます。

その後の社会学者たちは、彼らの功績をもとに、さまざまな領域で社会学的な研究を展開していきました。社会が、複雑なネットワークである以上、ほとんどあらゆる領域が社会学の対象となります。政治も経済も教育も、医療も家族も社会運動も、メディアも法律も心理も、あらゆる領域で社会学的な思考が活用できるのです。それぞれの領域に合わせて、政治社会学・経済社会学・教育社会学・医療社会学・家族社会学・社会運動論・メディア論・法社会学・社会心理学などといわれます。

そのため、社会学は「なんでもやってるけど、結局何なのかわからない」という感想を抱く人が多いかと思います。それもそのはず、対象である社会自身が曖昧で伸び縮みするネットワークとしかいいようがないからです。社会学は一言で言えば、「複雑な社会的ネットワークの一部分を、限られた調査方法によって明らかにする学問」です。

社会学は何の役に立つ!?

社会学のイメージがある程度まとまったと思うので、最後にどんな人が社会学に向いているのか、そして社会学を通じてどのようなスキルが身につくのかについて紹介します。

社会学に向いているのは、「日常生活に疑問をもつことができる人」ということができるでしょう。私たちの社会のあり方は、歴史的にも文化的にも「当たり前」ではありません。むしろ、「珍しい」とも言えるでしょう。「何で学校に行かなければならないのか、いつから学校はできたのか」、「なぜ毎日同じ時間に通勤しなければならないのか、労働は何のためにするのか、なぜお金を稼がなければ生活できないのか」、「この服はどこで生産されたのか、どのような労働環境で生産されたのか、なぜ服にはこんなに種類とランクがあるのか」このように「当たり前」を疑うことができる、あるいは好きな人は社会学に向いているということができるでしょう。

そして、社会学を学ぶことによって身につくスキルは「社会的ネットワークに対する想像力」と言えるでしょう。社会学を学ぶことで、普段は見えない世界を見ることができるようになります。モノの生産ネットワーク、メディアが私たちに与える影響、地球環境と社会的活動の関係性。社会学を学ぶことで、このような社会的ネットワークについての想像力が身につくと言えるでしょう。

まとめ

今回の記事では、「社会とは?」「社会学とは?」という疑問について解説していきました。社会とは「見ず知らずの人たちによって成立する複雑なネットワーク」であると表現しました。もちろん、そのネットワークにはモノや情報なども含めることができます。そのような新しい社会のあり方は、19世紀ごろに誕生しました。そしていまなお、その社会は日に日に複雑化しています。

このような複雑なネットワークに迫るのが社会学という役割です。そのため、社会学はほとんど全ての領域を対象にすることができる曖昧な学問だということを指摘しました。それは、社会学の問題というよりは、そもそも社会自体が伸び縮みするネットワークであることに依存しています。その分、社会学は自由に探求を広げることができます。

最後に社会学を学ぶことでどのようなスキルが身につくかについて紹介しました。それが、「社会学的ネットワークに対する想像力」であります。その想像力は、私たちの生活を支えている複雑なネットワーク関係を創造する力のことだと定義しました。

今後の記事では、より社会学の具体的なテーマについて解説していきます。

参考

アンソニー・ギデンズ(松尾精文・小幡 正敏訳)『近代とはいかなる時代か?―モダニティの帰結』紀伊國屋書店

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784880591810

見田宗介『社会学入門』岩波新書

https://www.iwanami.co.jp/book/b268828.html


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