現代社会で最も求めらている能力の一つが英語力でしょう。そして、教育改革の目玉の1つも英語でした。日本の高校教育は、主に「読み書き」メインで、「話す聴く」という”実践的”コミュニケーション能力が育っていないという批判が多くあります。そこで、文部科学省は「読む・書く・話す・聴く」という4つの技能を満遍なく身につけられるような指導要領の改訂、そして大学入試の改革を進めようとしました。そして、その4技能の中でも最も重視されているのが「話す力」です。グローバル化した社会では、実際に英語で多様なバックグランドを持つ人たちとコミュニケーションすることが求めらているからです。

こうした改革にはさまざまな批判の声も寄せられ、不十分なものになりましたが、4つの技能という方針は初等教育・中等教育全般(中学校・高等学校)に及んでいます。

小学3年生から英語に慣れることを目標に、英語学習活動が始まります。そして、小学4年生からは教科として英語が位置づけられ、「読み・書き」などが教えられるようになります。中学生からは、より英語学習が重点化されるようになります。これまでは1200語程度の単語習得が目安とされていましたが、今後は1600〜1800語程度の単語習得が目安とされるようになります。また、「話す・聴く」などの音声教育が重点化され、授業は英語で行うことが求められています。このように、英語学習の低年齢化・高度化が進んでいます。少し、戸惑ってしまった方もいらっしゃると思います。あるいは、英語に苦手意識がある方はもう憂鬱な気分になってしまったと思います。

では、高校の英語学習で求められていることはどのようなものなのでしょうか。そして、英語はどのように勉強していけばいいのでしょうか。

高校では何を勉強して欲しいの?

文部科学省は2022年より高等学校の指導要領を新しくすることを決定しています(いわゆる新指導要領)。特に、国語のあり方は大きく変化します。私たちの社会は変化が激しく、不確実で不安定になりつつあります。このような時代はVUCAの時代(できればLoohcsで記事作ってリンク貼る)などと呼ばれています。 VUCAとは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の四つの英単語の頭文字をとった造語です。

このような時代においては、多様な人と協働し、絶えず目的を再設定しながら、前へ進む力が求めらています。そしてグローバル化の時代において、日本語だけではなく、英語などの外国語も活用しながら、このような協働活動に参画する必要があるというのです。つまり、グローバル時代に主体的に社会参画するための基礎的な能力として、英語をはじめとする外国語の能力が必要だということです。

では、具体的にどのようなことを勉強していくのでしょうか。まず、最も重点的に強化された科目が「コミュニケーション英語」です。小中学校で学んできた英語コミュニケーションを前提に、より高度な英語のコミュニケーション能力を身につけることが目標とされています。具体的には、全員が必修科目の「コミュニケーション英語Ⅰ」、より発展的に学びたい生徒が履修する「コミュニケーション英語Ⅱ」、より高度な学習を行う「コミュニケーション英語Ⅲ」という科目が用意されています。特に、「コミュニケーション英語Ⅲ」を履修した場合は、英語圏でも難なく活動していくことができる程度の英語力を身につけることができます。

このように、「コミュニケーション英語」では、4つの技能のすべての能力を高めていくことが目標とされています。ただ、これまでの英語教育と異なる点は「生きた英語」を学んでいくという点でしょう。実際に会話をしたり、発表をしたりすることによってより実践的に英語に触れていくことが「コミュニケーション英語」の大きな目標です。

また、「話すこと・書くこと」に特化した「論理・表現」という科目も新たに設置されます。「論理・表現」という科目では、英語で論理的なスピーチやプレゼンテーションをしたり、英文を書く能力を向上していきます。「論理・表現」という科目も、「論理・表現Ⅰ」「論理・表現Ⅱ」「論理・表現Ⅲ」の3つに分かれています。数字の数が上がっていくに従って、扱うべきとされる文章量や表現の数なども多くなっていきます。つまり、ある程度の分量をもった英語表現を話したり、書いたりする力を身につけていくのが「論理・表現」という科目の大きな目標です。

そして、どの科目も中学校と同じく英語で授業することが求められています。とはいえ、実際の教育現場ですぐさま指針通りの授業をすることは難しいでしょう。とくに、話す・書くなど発信する力を重視している新指導要領に対応できる教員の数は少ないと思います。では、どのように勉強していけばいいのでしょうか。

英語はどのように勉強すればいいの?

文部科学省は、グローバル時代に主体的に外国語で発信することができる人材の育成のために「話す」ことを特に重視した英語カリキュラムを作成しました。「日本人は英語を中学・高校で6年間勉強しているのに、全然話せない。」という意見も広く社会的に共有されたものです。それに対して、「すべての日本人には英会話が必要なわけではない。むしろ、英文を読む力の方が重要だ。」という意見もあります。そして、実はこのような対立は戦後一貫して対立していました。このような対立が続く背景には、「英語をはじめとした第二言語がどのように習得されるか」という論点よりも「グローバル化に伴って英語が必要になる」という論点が優先されてきたことがあるでしょう。つまり、「英語が話せるように」という社会的ニーズからカリキュラムのベースを考えるあまり、「英語がどのように習得されるか」という関心が忘れられがちなのではないでしょうか。

第二言語習得論という観点から英語学習について考えると、むしろ「話すこと」よりも「読むこと・書くこと」を重点的に行うほうが効果的だと言われています(今井,2020)。音から学習を進めるのは、幼児期には効果的ですが、ある程度の年齢以上になると音からの学習は困難になってきます。なぜなら、すでに日本語の音に慣れてしまって、外国語の音を正確に聴くことができなくなってしまうからです。そのため、第二言語習得においては「読むこと」「書くこと」を中心に行う方がいいとされているのです。

まずは文法を理解する

認知科学の知見によると、学習においては「スキーマ」が重要であるとされています。「スキーマ」とは知識を結び合わせる枠づける体系のことです。例えば日本語では、わかめ・こんぶ・ひじきなど区別しますが、英語では全てまとめてsea weedと表現します。このように、言語にはそれぞれ特有の世界の見方というものがあるのです。日本語では、「てにをは」が重要ですが、英語では自動詞や他動詞の区別が重要視されます。日本語は小さい頃からの学習によって自然に日本語のものの見方-スキーマを獲得していますが、第二言語では母語とは異なるスキーマを獲得しなければなりません。そして、言語のスキーマこそがいわゆる文法と呼ばれるものです。そのため、まずは文法を体系的に理解し、英語の世界観を獲得することが重要なのです。

単語を増やすことが何よりも大事

次に、英語学習において重要なことは、「単語を増やすこと」です。しかし、「1つの単語に1つの訳」を載せているような単語帳を用いるのは効果的ではありません。そもそも言葉は生き物なので、単語は1つの意味で使われることはありません。文脈によって単語の意味は多様な意味を帯びるのです。そのため、単語を学ぶ際にはどのような文脈で用いられることが多いのか、そしてどのような単語とよく用いられるのかを知ることが重要です。

例えば、”run”という単語は「走る」という意味ですが、”run a company”で「会社を経営する」という意味にもなります。runは「走る」という意味で覚えていたら、「会社を走る」などちんぷんかんぷんな訳をしてしまうでしょう。では、単語はどのように取得していけばいいのでしょうか。それは、「その単語がどのような単語とセットで使われるのか」(共起語)、「その単語の類義語としてどのようなものがあるか」(類義語)に注目することです。

「そんなこと言われても難しいよ」と思われる方もいるかと思いますが、”SkeLL”というツールが役に立ちます(今井,2020)。このツールで、”run”という単語を検索してみるとまず、この単語を用いた例文が出てきます。例文をみることによってどのような文章で使われるのかがわかるでしょう(写真1)。

写真1(出典:https://skell.sketchengine.eu/#home?lang=en 2022/01/26閲覧)

さらに、”Word Sketch”というボタンを押すと”run”という単語と使われやすい「主語」「目的語」「前置詞」(共起語)などを知ることができます(写真2)。”run”という他動詞の目的語として”home”や””business、”program”などの単語が使われていることがわかります。

写真2(出典:https://skell.sketchengine.eu/#home?lang=en 2022/01/26閲覧)

さらに、”Similar words”というボタンを押すと”run”の類義語が出てきます(写真3)。このツールを用いれば、”run”という単語を学ぶと同時に多くの単語も学ぶことができます。

写真3(出典:https://skell.sketchengine.eu/#home?lang=en 2022/01/26閲覧)

もし、全く意味がわからないという単語に出会ったらこのツールを用いて、単語を増やしていくのがいいでしょう。そして、単語が実際に使われる文脈を知ることで「英語の世界観」を獲得していくことができるでしょう。

「急がば回れ」という言葉もありますが、「話す力」を伸ばすためには、いきなり実践的な練習をするよりも「英語の世界観」を知ることからはじめるのがいいでしょう。

次の記事では、「読む・書く・聴く・話す」の4技能の能力をどのように伸ばしていけばいいのかについて紹介していきます。

参考文献
今井むつみ,2020,『英語独習法』岩波新書


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