生物は理科系教科の中でも暗記すべきことが多い教科だと思われがちですよね。その代わり化学や物理などと比べると、数式などがあまり出てこないので理数系の教科が苦手な文系の生徒の多くが選択すると思います。ただ、カタカナや英語などが多く、覚えるべきことも多いため、敬遠されがちな教科でもあると思います。確かに覚えづらい用語が多く、複雑な事象を理解しなければならない厄介な科目ではあるでしょう。しかし、覚えるべきことは多いですが、一度生命の仕組みを理解すればすらすら学習が進む教科であると思います。それ以上に、私たち人間を含む生命体がどのように誕生し、どのように進化し、どのように生きており、そしてどのように生命同士が関連しあっているのかということを理解できるのが生物学あるいは生物という教科の面白い点でしょう。

生物で何を勉強して欲しいの?

文部科学省は2022年より高等学校の指導要領を新しくすることを決定しています(いわゆる新指導要領)。特に、国語のあり方は大きく変化します。私たちの社会は変化が激しく、不確実で不安定になりつつあります。このような時代はVUCAの時代などと呼ばれています。 VUCAとは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の四つの英単語の頭文字をとった造語です。

この時代において理系科目の基礎的な知識や考え方は国際的にも需要が高まってきているものの、日本の中高生の理系教科への関心や好奇心は国際的にも低い水準となっています。文部科学省はこの事態に危機感を持ち、理系科目の醍醐味でもある「観察・実験」などの自然科学の研究方法への理解も深められるようなカリキュラム設計へと指導要領を改訂しました。

そして、文部科学省は理科系科目で学ぶべきことを「エネルギー」、「粒子」、「生命」、「地球」の四つの大分類にまとめています。生物はその中でも「生命」について主に学ぶ科目となっています。

とはいえ、今回の改訂は国語や数学に比べると、前回の指導要領からの変更点は少ないものとなっています。「生物」と「生物基礎」という科目の区分もそのまま残っています。

生命のメカニズムについて学ぶ

生物学は「さまざまな生物の生命のメカニズム」を明らかにする学問です。生物学の形ができあがったのは18世紀から19世紀にかけてです。そして、その後の生物学の発展は社会科学やコンピューター科学などにも大きな影響を与えました。しかし、生命とは何かという問題については古代から問われてきました。生命については大きく分けて「生気論」と「機械論」という二つの立場が存在しています。生気論とは、生命と物質には超えがたい壁があるという考えです。機械論とは、生命も物質も同じ存在であるという考えです。比喩的に表現するならば、人間には目には見えない「心」があるというように考えるのが生気論であり、人間の思考や行動は「心」脳の仕組みと働きによって説明可能だと考える立場が機械論です。こうした生命観の対立は何と古代から議論されておりました。この問題は現代においても決着がついているとは言えない状況です。

以上は理論的な側面から見た生物学の起源ですが、生物学の知見の発展は解剖技術の発展とも密接に関連しています。動物や人体の解剖も実は古代社会から行われていたようです。とはいえ、解剖がより一般的になり、身体の構造や働きについてより探求しようというムーブメントが生じるのがルネサンス期以降のことです。ルンサンスの巨匠であるレオナルド=ダ=ヴィンチも解剖にはかなりこっていたようで正確な解剖図なども記しています。

17世紀になると解剖学のみならず周辺の科学も発展したことにより、機械論的な見方が優勢になっていきました。人間とカエルの身体の構造や臓器の機能は大して変わりませんし、生命活動に必要なエネルギーは呼吸によって吸収される酸素に原因があるということもわかってきたからです。このような流れの中で、生命の発生や仕組み=生命のメカニズムについて科学的に検証する生物学という学問が姿を現してきたのです。

そして、19世紀にダーウィンが唱えた進化論は大きな衝撃を与えました。このように存在する生命はある単純な生命体から次第に進化していったということが説得力をもって提唱されたからです。特に理性を有する人間を中心とする世界観をもっていた西洋の人々にとって進化論はいままでの常識を破壊する議論でした。

20世紀になると遺伝子やDNAについても研究が進んでいき、生命の謎がどんどんと解き明かされていきました。それに伴い、生命を操作するということも可能になり倫理的には大きな問題が提起されるようになりました。

私たちは生命をもった存在ですし、植物や動物も同じように生命をもった存在です。あるいは人間の中にも複数の生命体が共存しています。このように私たちは生命に取り囲まれて生きています。このように、生物学は生命とはどのような存在か、生命のメカニズムはどのように機能しているのかについて扱う学問なのです。そのことを踏まえた上で、生物という科目を勉強していくと、無味乾燥な暗記科目ではない生物の豊かな側面が現れてくるのではないでしょうか。

結局、何を勉強すればいいの?

生物学がどのような学問であるか、生物学の関心がどこにあるのか、その概要だけでも理解していただけたのではないでしょうか。では、具体的には高校で扱う生物という教科ではどのようなことを勉強していくのでしょうか。そして、どのように勉強していくのがいいのでしょうか。高校生物で学ぶ分野は大きく分けて5つです。具体的には、「生物の進化」「生命現象と物質」「遺伝情報の発現と発生」「生物の環境応答」「生態と環境」です。では、それぞれの分野ではどのようなことを勉強していくのでしょうか。

生物の進化

「生物の進化」という分野では、生命の起源や遺伝子の進化そして生物系統の進化について学んでいきます。生命の基本的な単位は細胞です。生命は極めて単純な細胞から徐々に複雑な細胞を形成していき、さらに植物や動物へと進化していきました。しかし、依然として生物の基本的な構成要素は細胞です。まずは、生命の起源でもある細胞の進化について学んでいきます。次に、生命の情報を生成し、伝達する DNAや遺伝子について学んでいきます。細胞や遺伝子などミクロな生命について学習した後は、多様な種をもつ生物の進化を扱います。

生命現象と物質

「生命現象と物質」の分野では、たんぱく質などの生命活動の基本的な構成物質とその働きなどを学んでいきます。たんぱく質は人間の身体の基本的な構成物質でもあります。また、生命の活動には酸素の存在が不可欠です。基本的に生命は、呼吸によって酸素を取り入れることによってエネルギーを生み出しているからです。生命活動の基本とも言える呼吸や、主に植物でみられる光合成について学んでいきます。

遺伝情報の発現と発生

「 遺伝情報の発現と発生」という分野では、遺伝情報を複製し、伝達する遺伝子の仕組みや遺伝子発現について学んでいきます。遺伝子とは身体情報の設計図のようなものです。つまり、遺伝子の存在によって生命は自らに類似した存在を再生産することができるのです。親子の身体的特徴が類似するのもこの遺伝子が原因となっています。この分野では、こうした遺伝子の仕組みなや遺伝子がどのように生じるかについて学んでいきます。また、遺伝子の存在が明らかになって以降、人類は遺伝子を操作することができるようになってきました。それに伴う倫理的な問題はありつつも、食品・医療など幅広い分野に遺伝子操作技術は応用されています。この遺伝子操作技術についても学んでいきます。

生物の環境応答

「生物の環境応答」という分野では、動物や植物がどのように周囲の環境と関係をもっているのかについて学んでいきます。例えば、日頃私たちが何気なく行っている食事をすることなども味覚と環境の応答関係にあります。他にも私たちの五感すべてが常に外界からの刺激を受け取って、神経系を通じて身体全体に必要な情報を届けています。これは、植物においても同じことです。水や養分を求めて伸びていく根や光を求めて伸びていく茎なども植物と環境の相互関係にあります。このように、生命がどのように外部環境と関係をもち、存在しているのかを学ぶのが「生物の環境応答」という分野です。

生態と環境

「生態と環境」という分野では、さまざまな生命体がどのように互いに関係をもっているかについて学んでいきます。私たち人間の生は、異なる生命を持つ存在と依存し合いながら営まれています。植物が存在しなければ、動物は呼吸ができませんし、人間は植物や動物を食べることによって生存できています。このような生命のつながりのことを「生態系」と呼びます。あるいは人間社会は、複数の人間たちが互いに協力することによって成立しています。このような一定数の個体のまとまりのことを「個体群」と呼びます。この分野では、生態系や個体群など集団としての生命を学んでいきます。

では、生物という教科はどのように勉強していけばいいのでしょうか。まず、教科書を読み、問題集を解いていくというオーソドックスな勉強はするとしてもそれだけでは生物学のおもしろさに気づくというのは困難でしょう。また、よほどの設備が整っていなければ実験するというのもなかなか難しいかと思います。現代では、3D映像などがYoutubeなどでも気軽に見れますし、ナショナルジオグラフィックの映像資料も生命の魅力を知る上では優れています。このように、映像などを通して生命のダイナミズムを知るというのも必要でしょう。そして、学校の教科書はどうしても無味乾燥になりがちですが、一般教養向けに大学の教授などが書いた本などは予備校講師の書いた参考書よりもはるかに面白いものがたくさんあります。映像資料や参考文献を活用しながら、勉強を進めていくといいでしょう。今後の記事では映像資料やおすすめの文献なども適宜紹介していきます。

生物学を通じて身につく能力とは?

最後に、生物学を学ぶことによってどのような能力が身に付いていくのかについて考えていきたいと思います。生物学は、生命のメカニズムについて研究する学問でした。そして、生命のメカニズムはたいへん複雑で、さまざまなものが重なり合っています。生物学を学ぶことによって、「システム論的思考力」が身につくのではないでしょうか。「システム」とは複数の事物が複雑に関係を持ちながら形成される仕組みのことです。まさに生命の仕組みはシステムと言えるでしょう。そして、そのような生物学の思考法が社会科学やコンピューター科学などに影響を与えた点でもあります。私たちの生命は単純な物質に還元できるのではなく、さまざまな物質や生命が相互関係を結ぶことによって成立しています。このように、何か特定の一つのものに還元するのではなく、複数のものがより集まって全体を構成している様子を考えるのが「システム論的思考力」といえます。「システム論的思考力」は「システム思考」とも言われることがありますが、生物学だけではなく多くの分野で活用されている思考法でもあります。生物学を通じてそのような思考法を身につけていくことができるのではないでしょうか。


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