多くのは高校生が最も苦手とする科目。それが数学なのではないでしょうか。数学なんてできればやりたくないという人はたくさんいると思います。数学が好きな人にとっては数学ほど楽しい科目はないようですが、数学が嫌いな人にとっては数学なんて見たくもないかもしれません。また、中学時代には数学がそれなりにできたが、高校に入ると数学が全くわからなくなったという人もそれなりにいるでしょう。今回は、そもそも数学って何を学ぶ学問なのかについて紹介していきたいと思います。

数学で何を学ぶべきなのか?

文部科学省は2022年より高等学校の指導要領を新しくすることを決定しています(いわゆる新指導要領)。私たちの社会は変化が激しく、不確実で不安定になりつつあります。このような時代はVUCAの時代などと呼ばれています。 VUCAとは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の四つの英単語の頭文字をとった造語です。

数学の知識を前提にするAIなどの技術が社会の基礎となっている現代では、数理分野の知識が必要不可欠だと日本政府は考えています。具体的には、

数学的に考える資質・能力の育成を目指す観点から、現実の世界と数学の世界における問題発見・解決の過程を学習過程に反映させることを意図して数学的活動の一層の充実を図った。また、社会生活などの様々な場面において、必要なデータを収集して分析し、その傾向を踏まえて課題を解決したり意思決定をしたりすることが求められており、そのような資質・能力を育成するため、統計的な内容等の改善・充実を図った。

と言っています。要は、現実の問題発見・解決の過程ではデータを収集・分析し、それをもとにして意思決定をする必要がますます求められるようになっているので、数学では統計に必要な知識をより学べるように指導要領を改訂したということです。具体的には次のように科目編成が変わります。

出典: 高等学校新学習指導要領数学について 数研出版

この新旧対応表を見てもわかるように統計や確率に必要な知識が増加したということがわかります。例えば「仮設検定の考え方」や「頻度確率」、「区間推定」などは統計学の基礎的な知識です。AI技術の大半はこのような統計や確率の知識に基づいているので、このような改訂になったのだと思います。共通テストの数学でも、従来よりも確率や統計に関する分野からの出題が増えると言われています。AIがどのような技術かについては、数学の特集で後に触れることになるでしょう。

結局、何を勉強すればいいの?

文部科学省が今回の指導要領でもっとも重視しているのが確率や統計に関する知識でしたが、ではそれだけ勉強していればいいのでしょうか。もちろん、そうは問屋が卸しません。数学にはそれ以外にも学ぶべき分野があるのです。そして、日本の数学の指導要領は数学が何を勉強すればいい科目であるかわかりにくい編成となっています。例えば、「数学Iと数学Aって何を学ぶの?」がとてもわかりづらいですよね。真っ先に改訂すべきはこのわかりづらい科目編成だと思うのですが、、、

そして科目編成がわかりやすくなれば、高校数学で何を勉強すればいいかもわかりやすくなると思います。では、どのような科目編成にすればわかりやすくなるのでしょうか。オーソドックスな数学の分類は「代数学」「幾何学」「解析学」の三つとなります。そして、数学が何をする学問なのかがわかれば、ただただ計算問題を解くだけではない数学のおもしろさが見えてくると思います。

代数学

まず、「代数学」とは数について扱う数学の分野です。特に「数の代わり」と書くように、数を文字で表現することによって未知数を求めることを目的にしています。例えば、方程式などの解を求めるのが「代数学」です。y=5x+2という式とy=3xという式が与えられたときには、二つの式を用いることでx=-1,y=-3という数値を求めることができます。未知数を文字で表すことによって、非常に単純な計算によって求めたい数値に辿り着くことができるようになったのです。

数を文字で表すというアイディアは、17世紀ごろに生まれましたが、数を文字で表すというイノベーションによって数学は大きく飛躍していくのです。高校数学の分野だと、「数と式」「二次方程式」「複素数」などが代数学に分類されます。ポイントは、繰り返しになりますが数を文字で表すことによって未知数を求めることです。代数学の中に、整数論や数列なども含まれることがあります。

幾何学

次に、「幾何学」とは論理や図形について扱う数学の分野です。「論理も幾何学に含まれるの?」と疑問を持たれた人もいるかと思いますが、幾何学は論理(特に命題と証明)をベースにして発展した分野なのです。名前は聞いたことがあるかと思いますが、ユークリッド幾何学が高校で学ぶ幾何学のベースになっています。ユークリッド幾何学は古代ギリシアで誕生しましたが、なんと19世紀まで数学の標準的な教科書として読み継がれていたようです。まずユークリッド幾何学は図形についての公理や定義から始まります。「線は幅のない長さである」などが定義されています。

現実に存在する線は全て幅をもちますが、厳密に図形について考える上では線の幅が邪魔になってしまうのです。0.5mmのシャーペンの芯を使うか、0.7mmのシャーペンの芯を使うかによって図形の性質が変わってしまったら困りますよね。そうならないために、以上のような定義をユークリッドは細かく行なっていきました。そのことで、図形について現実に発生するノイズなしに考えることができるようになったのです。ユークリッドの定義をもとに、図形についての性質がどんどん明らかにされていきました。高校数学では「命題の証明」「図形の性質」「三角比」などが幾何学に分類されます。

解析学

最後に、「解析学」は関数の変化などについて扱う数学の分野です。関数とは、インプットとアウトプットの関係を示す式のことです。厳密な定義はさておいてこのようにイメージしておくと分かりやすいかと思います。例えば、y=3xは一次関数です。xの値をインプットすれば、自動的にyの値も一つのアウトプットがでてきます。具体的には、x=1とインプットすればy=3というアウトプットが返ってきますね。このような関係を表すのが関数です。

関数には、二次関数・三角関数・指数関数・対数関数などがあります。そして、この関数がどのように変化するのかを解析するための道具が微文法や積分法なのです。関数という概念が理解できていないと、微分や積分が何をしているかわからないでしょうし、多くの高校生が躓きやすいのもこの関数の分野でしょう。ただし、現代数学の多くはこの「解析学」の成果に大きく依拠しているのも事実であり、数学の発展は「解析学」の登場なしには考えられません。大変重要な数学の分野です。

統計学

文部科学省が重点化している確率や統計は、数学の応用的な分野として生まれた統計学に分類されます。統計学の知識と技能は現代社会のあらゆる分野に応用されています。コロナウイルスの感染拡大を予測する際も統計学の知識が威力を発揮しました。自然科学や社会科学を問わず、統計は必須の教養ともなってきていますし、文部科学省もいうようにAI技術が拡大する現代社会において統計学の知識がなければAIが何をやっているか理解することができません。近年では、分野横断的な学問領域であるデータサイエンスという分野が社会的にも注目され始めています。そのため、今回の指導要領の改訂で確率や統計の分野が重点化したのです。高校数学の分野では「場合の数」「確率」「データの分析」などが統計学に分類されます。

数学を通じて身に付く能力は?

数学が苦手な人に共通していることは「数学が何をやっているかわからない」ということだと思います。それもそのはず、数学は一般化・抽象化を得意とする学問だからです。例えば、幾何学の始祖ユークリッドは、抽象的な定義を図形に当てはめることによって、現実の存在する複雑で膨大な図形の共通点を抽出し、一般化したのです。この作業によって、現実に発生するノイズを消去して「純粋な形」について考えることができるようになったのです。現実に存在する無駄なものを削ぎ落とし(抽象する)、いかなる場合でもあてはまる一般的なケース(一般化する)を考察するのが数学を通じて身に付く能力の一つと言えるでしょう。

具体的なものと抽象的なものを行ったり来たりしながら、確実なものを追い求めていくという数学の「ものの考え方」は多くの分野に通じる基本的なスキルといえるでしょう。わたしたちはついつい目の前のことに関心がいってしまいがちです。そのような時に、出来事に一定の傾向や法則はないのか。この事柄を一般化するとこういう教訓になるのではないか。このように考えることで、視界が開けることもあります。逆に、抽象的な事柄ばかりを追い求めて現実で起こっていることのパターンを把握しそこなったりすることもあります。

まとめると、抽象的なことを具体的な事柄に当てはめて考える(演繹的思考)、具体的な事柄の積み重ねから一定のパターンを類推する(帰納的思考)、そして目の前で発生したことからその原因を推定する(推論)という三つの基本的な思考力を数学を通じて身につけることができると思います。そしてそのような基礎的な思考力を身につけてはじめて、データ分析などの応用的な分野に挑戦できるのではないでしょうか。Loohcs高等学院では、数学の世界に触れ、数学的なものの見方を獲得するためのカリキュラムを設計しています。


数学の他の記事を読む

他の科目の記事を読む

ルークスで学ぶ

オープンキャンパス

学生・教職員が企画するオープンキャンパスはこちらから

個別入学相談

入学に関するさまざまな疑問・お悩みをご相談ください

イベント/体験授業

特別授業の一般公開イベントは誰でもお気軽に申し込めます

入試案内

4月・9月入試に関する情報はこちらから

学校・学生達の雰囲気を体感してみませんか?

Loohcs高等学院について知りたい方へ

個別相談のご予約はこちら